青雲之志 町長コラム(11月)
- [公開日:]
- [更新日:]
- ID:9044
ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます
「光がしずか」な町を歩く読書と散策の秋
今年は、国民的作家・司馬遼太郎(しば りょうたろう)氏の没後30年にあたります。全国各地を巡った紀行『街道をゆく』は「近江からはじめましょう」という言葉とともに、第1巻「湖西のみち」から始まりました。
実はこの『街道をゆく』には、日野町も登場します。第2巻『韓のくに紀行』では小野の鬼室神社が取り上げられ、第24巻『近江散歩、奈良散歩』では、「にわかに近江の蒲生郡が見たくなった」という司馬氏が、半世紀あまり前の亥年のお正月に日野を訪れ、町並みや馬見岡綿向神社を歩いた様子が描かれています。
日野へ入った司馬氏は、まず「大正時代にまぎれこんだような家並」に驚きます。「どの家も木口(こぐち)がよく、街路は閑寂ながら整然としていて、しかもよけいな看板などはなく、品のいい町だった」。家並をたどって神社の鳥居をくぐれば、今度は「境内の結構や社殿がふしぎなほどに品がよかった」と記しています。町にも社にも、司馬氏は同じ「品」を見ていたのです。
やがて筆は、町そのものを包む雰囲気へと向かいます。「町をつつんでいる陽の光までがぎらつかず、空に一重の水の膜でも覆っているように光がしずかだった」。この「光がしずか」という表現に触れたとき、思わず膝を打ちました。日頃から感じながら、言葉にできずにいたものが、そこにありました。
さて、秋は読書の季節であり、散策にも心地よい季節です。この秋は、お一人で、あるいはご家族やご友人と、ふらりと気の向くままに出かけてみてはいかがでしょうか。見慣れた地元の道も、以前から行ってみたかった場所も、きっと違った表情を見せてくれるはずです。もちろん、日野町内の町並みや社寺もおすすめです。司馬氏が見た「しずかな光」は、今も変わらず日野の町をつつんでいます。皆様それぞれの読書と散策の秋をお楽しみください。

広報ひの2026年11月号掲載
日野町長 堀江和博

